アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎は、空気中のスギなどの花粉やハウスダストといったアレルゲン(抗原)が鼻粘膜に付着すると体内で抗体が産生され、マスト細胞という細胞とくっつきます。その後、再びアレルゲンが侵入すると、マスト細胞からヒスタミンなどのアレルギー誘発物質が放出され、鼻水・鼻づまり・くしゃみといったアレルギー性鼻炎に特有の症状を起こします。
アレルギー性鼻炎には、スギ花粉やヒノキ花粉などが原因となり、毎年同じ季節に起こる「季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)」と、ハウスダストなどが原因となり、季節に関係なく年間通して起こる「通年性アレルギー性鼻炎」があります。
検査・治療
アレルギー性鼻炎の検査については、アレルギー性鼻炎があることの証明のための血中IgE測定や血中・鼻汁中好酸球測定、原因抗原を調べるための血清特異的IgE検査などがあります。
治療には、
①スギ花粉やダニなどのアレルゲンからの回避
②薬物療法として抗ヒスタミン薬・抗ロイコトリエン拮抗薬の内服や点鼻・点眼
③アレルゲン免疫療法
などが挙げられます。
アレルゲン免疫療法
アレルゲン免疫療法は、アレルゲンを体内に少しずつ取り入れて、体を徐々にアレルゲンに慣らしていって抗体をつくる治療です。
従来は皮下注射が主流でしたが、2014年に舌下免疫療法が開始されると舌下免疫療法のほうが簡便で続けやすいこともあり、結果的に治療効果が高くなりました。
舌下免疫療法は、スギ花粉症またはダニアレルギー性鼻炎と確定診断された患者さんが治療を受けることが可能です。
スギ花粉症に用いるシダトレン®、シダキュア®の特徴は以下となります。
● 優れている点
- 臨床試験で、約8割の方に効果があり、特に約2割の方は症状が出なくなったとされます。
- 根治が期待できます。
● 注意すべき点
- 3~5年間治療を続ける必要があります。
- 臨床試験では、約2割の方には効果がありませんでした。
- 口内炎や唇の腫れなどの副作用を生じることがあります。
当院では、アレルギー性鼻炎の抗原検査、抗アレルギー薬の内服・点眼・点鼻薬処方、スギ・ダニに対する舌下免疫療法が可能です。
アナフィラキシー対策
アナフィラキシーとは、アレルギーの原因物質に触れたり、食べたりした後に、数分から数時間で全身にあらわれる急性(即時型)のアレルギー反応です。
アナフィラキシーの重症型では、血圧低下や意識障害などをきたし、ショック状態に至ることがありアナフィラキシー・ショックといわれます。 アナフィラキシーを起こすものとしては、食事、薬剤、ハチなどの昆虫が多いとされています。
アナフィラキシーに対する治療薬としては、
①アドレナリン自己注射薬、
②抗ヒスタミン薬、
③気管支拡張薬、
④ステロイド薬などを使用して治療を行います。
アナフィラキシー・ショックの治療には早期にアレルゲンを取り除き、アドレナリン注射等による早期対応が必要となります。
当院では、アナフィラキシー既往がある方や高リスク患者様に対してアドレナリン自己注射薬のエピペン®の処方が可能です。
気管支喘息
気管支喘息では、気管支におけるアレルギー性の慢性炎症により気管支粘膜を損傷し気道が過敏となり、軽い刺激でも喘息発作が誘発されます。温度差のある場所への移動する際に発作が誘発されたり、深夜から明け方の時間帯に発症しやすいなどの特徴があります。また発作を繰り返すことで気管支の炎症が増悪し気道の過敏性も亢進してしまう悪循環が発生します。
気管支喘息の治療においては、発作を発症した際に行う発作治療薬(リリーバー)と発作を予防するために行う長期管理薬(コントローラー)が挙げられます。喘息治療の中心的な薬剤が長期管理薬である吸入ステロイドであり、症状にあわせて吸入ステロイドの用量調整やその他の薬剤を併用して管理することが重要となります。
独立行政法人 環境再生保全機構の提供する動画チャンネルでも正しい吸入の方法を動画が確認することが可能です。
咳喘息
咳喘息は気管支喘息の亜型であり、慢性の咳が唯一の症状となっている状態となります。長引く咳は、3週間を経過した場合を遷延性の咳、8週間を超えて経過した場合を慢性の咳に分類します。遷延性・慢性の咳は様々な原因で発症し、治療法は原因疾患にあわせた方法が選択されます(表1)。咳が長引く慢性咳嗽の原因疾患としては、欧米では咳喘息、胃食道逆流症、後鼻漏が三大原因とされますが、本邦においては咳喘息の割合が高いことが報告されています。
咳喘息の治療は、気管支喘息と同様に吸入ステロイドや気管支拡張作用のある吸入薬を中心に行います。咳喘息の治療が不十分となると成人では30~40%の割合で喘鳴が出現し気管支喘息に移行することも報告されており、慢性の咳を放置することなく咳喘息に対する適切な治療を行うことが必要です。
(表1)遷延性・慢性咳嗽の原因と治療法の例
遷延性・慢性の咳を起こす疾患 | 主な治療法 |
---|---|
咳喘息 | 気管支拡張薬 |
胃食道逆流症 | 胃酸分泌抑制薬 |
副鼻腔気管支症候群 後鼻漏 | マクロライド系抗生剤 |
アトピー咳嗽/喉頭アレルギー | ヒスタミン受容体拮抗剤 |
慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎 | 禁煙 |
降圧薬(ACE阻害薬)の内服 | 降圧薬の変更・中止 |
蕁麻疹
蕁麻疹はⅠ型(即時型)アレルギー反応に分類され、膨疹と呼ばれる皮膚の膨隆が数10分から約1日程度継続する皮膚変化です。皮膚にあるマスト細胞が活性化されることでヒスタミンなどの化学伝達物質が皮膚微小血管や神経に作用し皮膚症状が誘発されます。蕁麻疹では、まず臨床的にその種類を診断し、個々の症例の特徴を踏まえて治療立案すること大切(蕁麻疹治療ガイドライン)とされており、主たる病型には①特発性の蕁麻疹、②刺激誘発型の蕁麻疹(特定の刺激ないし負荷により皮疹を誘発することができる蕁麻疹)、③血管性浮腫、④蕁麻疹関連疾患、に分類されます。また蕁麻疹の中には、運動後に発症するものやストレスが悪化の要因となることもあります。
治療は、原因となっている要因の除去・回避が必要であり、内服薬として抗ヒスタミン薬が使用されますが、内服期間や併用薬の使用については蕁麻疹症状が社会生活に与える影響や症状の継続期間など考慮して調整することが必要となります。