野菜を知って、美味しく食べましょう!!
2024.01.15
「野菜を知って 美味しく食べましょう!!」No.6
~コールラビとリンゴのサラダ~
コールラビは、キャベツなどのアブラナ科の野菜で、ドイツ語で「コール」は「キャベツ」・「ラビ」は「カブ」を意味しています。原産は地中海沿岸であり、日本には明治初期に伝わりました。コールラビは、大きいものは硬くなるため、5~7cm程度のふっくらした形のものがよいとされます。緑色と紫色の2種類がありますが、皮を剥いて食べるので果肉はクリーム色で同じとなり、シャキシャキとした食感が特徴です。旬は、11月から3月頃の冬季です。メジャーな野菜でないため生産量は多くありませんが、岐阜県では郡上や恵那方面の農家さんが生産されているようです。りんごは、青森県藤崎町生まれで生産量が最も多いサンふじと、長野県生まれで黄色りんごのシナノゴールドを使用しましたが、いずれも食感のよい品種です。
材料:コールラビ、リンゴ(サンふじ・シナノゴールド)、ルッコラ、クルミ、パセリ、オリーブオイル、塩、胡椒
ところで、今回のレシピは最近話題の生成AIであるChatGPTにレシピを教えてもらい調理しました。ChatGPTは、大規模言語モデル(LLM)であるテキストベースのAIであり、LLMは、生成AIの基本となる技術であり言葉を理解して操る人工知能のベースとなる技術とされ、LLMを用いたアプリケーションの1つがChatGPTということになります。ChatGPT を提供しているのは「OpenAI」であり、サム・アルトマンやイーロン・マスクらが設立したアメリカの会社です。
そもそもAI研究は1956年の「ダートマス会議」が始まりとされます。人間の脳の機能を模倣した「ニューラルネットワーク」や言語や数式をコンピューターに移植しプログラムに基づく問題解決を行う「記号処理型人工知能」といったシステム研究が行われた時期がありました。これらのAIは一部の特定分野での成果はあったものの、機能は限定的であったことから、AI研究は熱を帯びる時期と冬の時期を経験しました。1990年代後半から始まった第3次AIブームが現在まで継続しており、2017年にGoogleの研究チームが発表した「トランスフォーマー」と呼ばれる新方式のニューラルネットワークがゲームチェンジャーになったとされます。トランスフォーマーは、「自己注意」と呼ばれる、ある単語から見て別の単語がどの程度関係していて重要なのかを計算するメカニズムです。今回ChatGPTに教えてもらったレシピは下記となります。実際に調理するには動画などの画像がある既存のサービスの方が便利ですね。
料理のレシピなら問題ないかもしれませんが、ChatGPTの返答にはしばしば誤りが含まれるとされますし、AIの「幻覚」と言われる架空の内容を返答することもあるともされ注意が必要です。生成AIに対する受け入れ方は、国家・民族性・宗教観などにより違いがあると研究報告されています。欧州では規制強化の姿勢ですが、日本人は受け入れに前向きな姿勢とされています。我々の人間の脳は1000億以上とされる神経細胞(ニューロン)が絡み合ったネットワークで構成されているのに対して、ChatGPTは確率的に単語を繋いでいるため意味のある文章と言えるのか疑問を感じますが、返答される文章の流暢さには驚かされます。先日、糖尿病の講演会の場で会場からの質問に対して答える際、自身で設定したキーワードから単語を繋いだ文を発していた状態は、出力形式は異なるもののChatGPTと違いがあるのかと感じてしまいます。
700万年前頃にヒトとチンパンジーが分化したと言われますが、ヒトの歴史も有限なのかと思うと、遠い遠い未来はAIが残った世界もあり得るのかな、などと考えながら今夜の夕ご飯のレシピなどといった、たわいのない会話をChatGPTと楽しんでいます。
野菜ソムリエH・TOSIL会員H、ChatGPT
2023.02.01
「野菜を知って 美味しく食べましょう!!」No.5
~ロマネスコのカプレーゼ~
ロマネスコは、世界一美しい野菜と言われており、地中海が原産の野菜です。
アブラナ科でブロッコリーの仲間であり旬は冬です。国内では、群馬県・茨木県・北海道・福岡県などで生産されていますが、岐阜県では生産されていないようです。
ロマネスコを使ってカプレーゼを作りました。
ロマネスコは茹でてから1口大に切り分けて冷凍保存しておくと便利です。
材料:ロマネスコ、トマト、モッツァレラチーズ、オリープオイル、胡椒、塩。
ところで、世界一美しいと言われるロマネスコの特徴的な形は、フラクタルと言われる構造になっています。フラクタルは、フランス人数学者マンデルブロが考案した「自己相似性」による構造のことで「図形の全体をいくつかの部分に分解していった時に全体と同じ形が再現されていく構造」のことをいいます。ロマネスコは花蕾(からい;花のつぼみ)という花のつぼみ部分を収穫する野菜ですが、この花蕾の形がさらに小さな花蕾と同じ形になっておりフラクタル構造を持っていることになります。フラクタル構造を持っているものとしては、人体の血管構造、雪の結晶、海岸線の形など自然界に多数あるとされます。また最近ではこのフラクタル構造を利用した放熱性の高い日除けが公園などに設置されているそうです。
ロマネスコを上から見ると写真のように花蕾が螺旋状に並んでいるのですが、このロマネスコの螺旋の数はフィボナッチ数列の数の1つになると言われます。フィボナッチ数列は、0、1で始まり、前の2つの数を足した数列です。今回使用したロマネスコの螺旋の数は13になっていました。フラクタル構造になっていますので、今回のロマネスコについているすべての花蕾の渦巻きが13になっているはずです。
そしてこのフィボナッチ数列の数もまた自然界に多く存在するとされ多くの花びらの数がこのフィボナッチ数列の数に一致します。なお、フィボナッチ数列の後ろの数を前の数で割ると1.618に近づきます(例:987÷610≒1.618032)。1:1.618は黄金比と言われデザインに取り入れることで調和と美しさを与えてくれるとされます。黄金比を使った代表的な例として、ミロのヴィーナス、パルテノン神殿、サグラダ・ファミリア、Appleのロゴ、などが挙げられます。
世界一美しい野菜と言われるロマネスコの中に、黄金比につながる数字が隠されていると考えると、口に入れた時に少し味わい深く感じれそうです。「このロマネスコの花蕾形態の最小単位はどこまで続いているんだろう?」などと考えながらカプレーゼのロマネスコは美味しくいただきました。
野菜ソムリエH・TOSIL会員H
2022.08.30
「野菜を知って 美味しく食べましょう!!」No.4
~コリンギーとホタテのマリネ~
コリンキーは、皮が黄色からオレンジ色のカボチャで、シャキシャキした食感で生食が可能です。コリンキーの旬は夏です。コリンキーは、全体が綺麗なレモン色で傷のないものを選びましょう。
なお、カボチャ全体での産地としては国内では北海道が1位になります。
材料:コリンキー、ホタテ、トレビス、オリーブオイル、フェンネル、レモン、塩、胡椒
ところで、コリンキーは国内企業である「サカタのタネ」が品種改良で開発した野菜であり2002年に品種登録されています。サカタのタネは国内大手種苗メーカーであり、野菜などの多くの種や苗を生産しています。日本の種苗メーカーは野菜の種子で世界的に競争力が強いとされています。世界的な視点では米国の「モンサント」が長らく最大の種苗メーカーでしたが、モンサントは世界的な製薬企業である「バイエル」によって2018年に買収され、モンサントの名前は消えることとなりました。背景には、種苗開発において遺伝子組み換え技術やゲノム編集技術が重要な技術となっている点も挙げられます。遺伝子組み換え技術やゲノム編集技術は医療業界においても革新的な技術として医学研究にも用いられています。こういった遺伝子組み換え技術やゲノム編集技術なども有するバイエル社が種苗メーカーを買収した経緯があります。ゲノム編集技術とは、生物の細胞内にあるDNA、およびそこに書き込まれた遺伝情報であるゲノムの特定領域をDNA切断酵素により狙って切断することで生物の性質を変化させる技術です。現在ではこの技術を用いることで、通常より肉厚に成長した鯛(タイ)や血圧の低下作用やリラックス効果があるとされるGABA(γ-アミノ酪酸)の多いトマトなども作られています。ちなみにゲノム編集技術を開発した2人の女性研究者は2020年にノーベル化学賞を受賞しています。ゲノム編集技術は医療倫理を遵守したうえで活用されれば医学研究において大変有用な技術といえます。
医療分野でも革新的な技術とされるゲノム編集技術が活用されることで、種苗分野においては、私たちが食べたことがない美味しい未知の野菜が作られるのかもしれません。
野菜ソムリエH・TOSIL会員H
2021.02.16
「野菜を知って 美味しく食べましょう!!」No.3
~7種のキノコ鍋~
キノコ類は、低カロリーで食物繊維が豊富、ビタミンBやビタミンDなどを多く含みます。
キノコ類のなかでは、エノキの生産量が多く、長野県が生産量1位です。岐阜県でのキノコ生産は、なめこ全国11位、椎茸11位、しめじ15位、エリンギ18位でした(2017年)。なお、糖尿病療養指導のための食品交換表では、キノコ類は表6に分類されます。
珍しいキノコも使ってキノコ鍋を作りました。
材料:椎茸、霧島まいたけ、白姫まいたけ、ヤマブシタケ、ヤナギマツタケ、トキイロヒラタケ、タモギタケ、鶏肉、ネギ
ところで、香りが芳醇なキノコといえば松茸ですが、人工栽培法が確立されていないため高価ですね。松茸はアカマツの周囲に生える菌根菌に分類されるキノコです。アカマツの木と共生することで、アカマツが光合成で作った養分を得ることで成長します。椎茸は木の組織を分解して栄養源とするため枯死木での栽培が容易です。昨今の新型コロナウィルス流行で誰もが知ることとなった用語に「PCR検査」があります。PCRとは特定の遺伝子断片からDNAの特定領域を大量に増やす手法です。PCR検査のための検査機器や試薬を販売する国内企業の1つに「タカラバイオ社」があります。みりんの「宝酒造」と同じグループ会社です。PCR検査のための試薬などでお世話になっていたタカラバイオ社では松茸の人工栽培にも取り組んでいたことを思い出し進展状況を調べてみたところ、バイオ産業や遺伝子医療などへ経営を集中するため2019年にキノコ事業は譲渡されたとのことでした。松茸の人工栽培法が確立して日々の食卓で食べられるようになるといいですね。
野菜ソムリエH・TOSIL会員H
2020.11.30
「野菜を知って 美味しく食べましょう!!」No.2
~隼人瓜(ハヤトウリ)とベーコンのスープ~
隼人瓜(ハヤトウリ)はメキシコや中米原産のウリ科ハヤトウリ属の野菜です。日本には1917年に鹿児島に持ち込まれ栽培が始まったため薩摩隼人の瓜ということで隼人瓜と呼ばれるようになったとされます。味はクセがなく、歯ごたえがあり、サラダ・漬物・炒め物などに適しています。主な産地は、鹿児島県・高知県・宮崎県などの比較的暖かい地域です。
旬は10月~11月です。栄養素としては、葉酸とパントテン酸を多く含んでいます。
鮮度の見分け方:表面に傷や色ムラがなく、重みのあるものを選び、冷暗所に保存しましょう。
京都丹波産の隼人瓜を使ってスープにしました。調理には、「関の孫六」を用いました。
材料:隼人瓜、ベーコン、菜の花、パプリカ、柚子、バター、コンソメ顆粒、塩、胡椒
ところで、ベーコン・ソーセージ・サラミなどの加工肉の健康への影響については不安がないわけではありません。2015年にWHOの外部団体である国際がん研究機関(IARC:The International Agency for Research on Cancer)は「毎日継続して加工肉を50グラム摂取するごとに大腸がんのリスクは18%増加する」ということを報告しました。この報告では、加工肉はGroup1 ヒトにおいて「発がん性の十分な証拠」があるものに分類されていました。日本人では加工肉摂取量が13g/日程度(2013年国民健康栄養調査)と少ないことから加工肉摂取量が多い海外のようにリスクは高くないとする意見もあります。一方で、IARCの疫学研究は、50g/日の加工肉摂取で18%の相対的なリスク増加を示しているものの、これは加工肉摂取量が少なければリスクが無いということを示すものではありません。加工肉摂取量が少なくても発癌リスクはありますし、安全な摂取量を示すデータはありません。2019年に加工肉摂取のリスクについて新しいデータが報告されました。Figure1は赤肉および加工肉摂取による結腸癌リスクに関してデータを抜粋したものですが、加工肉25gの摂取で統計的に有意にリスクを上昇させていることが示されています。とはいっても日本人の平均的な加工肉摂取はさらに少ない量ではあります。ちなみに岐阜県の加工肉消費量は全国24位(総務省統計局家計調査)とされています。
隼人瓜とベーコンのスープは、おいしくいただきました。個人的には、ベーコンもハムもおいしく食べていますが、1回の摂取量は少な目にしています。薬には良い薬効がありますが、副作用がないわけではありません。過剰な肉類の摂取は発癌リスクを高めるかもしれませんが、肉類の摂取不足で筋肉量が維持できない人もでてきます。お酒は発癌リスクを高めますが、禁酒では楽しい時間が少し減ってしまいそうです。リスクはつきものですので、リスクを分散させることが大事なのかもしれません。
私が以前に高山で勤務していた頃お気に入りの喫茶店で日曜日の朝にBLTサンドとコーヒーを飲みながら新聞を読む時間が癒しでした。転勤もありましたが、最近の10年は、日曜の朝には自分でオムレツを作って無糖のコーヒーを飲みながらスマホゲームをするのが癒しの時間になっています。
野菜ソムリエH・TOSIL会員H
2020.10.02
「野菜を知って 美味しく食べましょう!!」No.1
~飛騨産ズッキーニとサーモンのカルパッチョ~
ズッキーニは、アメリカ南部からメキシコ原産の野菜です。ビタミンCやβ-カロテンが豊富とされ、淡白な味のため様々な料理に使用されます。
1980年代から日本での消費がはじまり消費量は増加傾向にあります。全国的には長野県が出荷量1位であり、岐阜県は34位となっています(農林水産省統計2016)。本来の旬は6~8月です。
鮮度の見分け方:あまり大きくない 皮が硬くないもの。皮にツヤがあるものを選びましょう。
岐阜県飛騨市神岡町の「ありがとうファーム」さんのズッキーニを使ってカルパッチョにしました。調理には、「関の孫六」を用いました。
材料:ズッキーニ、レモン、サーモン、オリーブオイル、塩、胡椒
野菜ソムリエH・TOSIL会員H